紙の重さを減らしてみたい

 引退を迎え長年働いた職場で印刷物の整理をしています。山積みになった紙の報告書を前に考えてしまいます。活動の足跡を確かに刻んできた証ではあるのに、どこか胸の奥がざらつくような違和感です。私たちは環境保全を掲げる団体であるのに、こんなにも紙を使い続けていていいのだろうか――。その疑問は、廃棄する報告書の山が積み上がるほど重くのしかかってきました。

 報告書のページに、政府が「GX(グリーントランスフォーメーション)」を掲げ、社会全体の仕組みを脱炭素に向けて再構築していくという方針が目に留まりました。白書をめくりながら、省エネ、資源効率、再生可能エネルギーといったキーワードが並ぶのを見て、私はふと気づいたのです。私たちの“紙文化”もまた、社会のしくみの一部ではないかと。

 環境省の資料には、森林資源の保全や自然を活かした防災の重要性が書かれていました。気候変動が深刻化する中で、森林の健全性は地域を守る力そのものになります。その森林を、私たちは紙として大量に使っている。もちろん紙が悪者なのではありません。問題は、その使い方が「当たり前」になりすぎて、必要以上の消費に気づけなくなっていることでした。

 ある会議で、年配のメンバーが「紙がないと落ち着かない」と少し照れくさそうに言ったことがあります。私はその気持ちもよくわかります。紙は安心をくれる。しかし、政策文書を読み進めるほどに、私は確信を深めていきました。社会が脱炭素へ向かおうとしている今、NPOこそが最初に変わるべきではないか、と。

 それに、時代の流れは確実に変わりつつあります。国の助成制度では、環境NPOが「持続可能で効率的な運営体制」を整えることが求められています。つまり、紙に依存した古い情報管理では、いずれ限界がくるということです。電子化することは、単なる便利さではなく、組織を未来に適応させるための準備でもあるのです。

 そんな背景を踏まえて、私は思い切って提案しようと思います。「報告書は電子版を基本とし、紙の配布は必要最低限にしませんか」と。最初は戸惑いの声が上がるかもしれませんが、電子版の便利さを体験してもらえれば実感するのではないでしょうか。スマホで読めること、検索できること、更新が簡単なこと――紙ではできなかった価値があることを、多くの人が実感すると思います。

 紙文化を手放すのは、どこか寂しさもあります。けれど、私たちの活動は未来を守るためのものです。その未来を想像すると、今ここで小さな一歩を踏み出すことは、決して間違いではないと思います。紙を減らすという選択は、単なる節約でも効率化でもありません。国の政策が示す方向性と響き合う、環境NPOとしての「未来への責任」です。私たちの一歩は小さいかもしれません。しかし、その一歩は確かに、持続可能な社会への道を照らすはずだと思います。(M.H.さん)

2026年02月21日